2010年3月5日 聖徳大学附属小学校・長谷川先生インタビュー
 
 
 
本日は聖徳大学附属小学校・図工担当の長谷川先生をお伺いし、インタビューをさせて頂いてきました。
いつも行っている校長先生インタビューとはまた違った視点による学校に対してのお考えがお聞き出来たかと思います。

※ 質問者 : 上田佳弘(以下、キッズ@佳弘)  上田香織(以下、キッズ@香織)   回答者 : 長谷川先生

キッズ@佳弘
まず、先生のプロフィールをお聞かせ下さい。
長谷川先生
学生の頃は、中学・高校の美術教師の養成課程の中で主に陶芸をやっていました。当時はデザイン科の中に陶芸がありまして、セラミックデザインという名前の研究室でした。一般的に陶芸は、工芸の中に入っていますが、その頃はデザイン科の中にあり、セラミックデザイン研究室という名称でした。焼き物を使った立体デザインという意味です。卒業の時点では高校の美術の教師の募集というものがほとんどなかったので、まずは自立しようと思い企業で工業デザインをやりました。
キッズ@佳弘
といいますと、最初から教員になられてたわけではなくて、一旦会社の方に就職されて働かれていたということだったのですね。
長谷川先生
はい。ちょうどバブルが崩壊する直前で、まだ景気は良かったのですぐに採用されました。そこで7年ほど工業デザインなどをやりました。主に照明器具のデザインをやっていたのですが、いつかは教師になろうと思っていました。将来について考えた末、会社に辞表を出しましたところ、ちょうど聖徳の募集を見つけ、採用試験を受けましたら運良く採用されました。
キッズ@佳弘
そうだったのですか。そうしましたら、会社の方で働かれていた7年間の中で教員への道を探しながら働かれていたということなのでしょうか。
長谷川先生
最初の5年間くらいは仕事の方が手一杯でしてそのような余裕はありませんでした。
キッズ@佳弘
少し慣れてきてから視野を広げていったということですね。
キッズ@香織
もともとは教職・美術の先生になりたいという思いから中学高校の教職課程を学ばれていたという事なのですね。
長谷川先生
はい。もう大学を卒業すればなれるものだと勝手に思っていまして、かなり楽観的でした。
キッズ@佳弘
先生が教師になろうとしたきっかけはどのような事だったのですか。
長谷川先生
高校生の時、美術部に所属していたのですが、ほとんど勉強そっちのけで油絵を描いていいました。教わっていた美術の先生が、絵描きほどいい職業はないぞとおっしゃってまして、それなら自分も美術の教師になって、教えるかたわら絵を描こう、と思ったのがきっかけでした。
キッズ@佳弘
良い先生にめぐり会えたのですね。
長谷川先生
良かったのか悪かったのかは分かりませんが、もともと絵を描くのが好きでそれが仕事に出来たら良いなとは思っていました。
キッズ@佳弘
絵を描くという事自体は、もっと小さいころからおやりになっていたのでしょうか。
長谷川先生
そうですね。私が美術の教員になろうと思った原点は、小学校の低学年くらいだったと思いますが、地域のお絵かき教室というのに通っていまして、本当にそれが楽しくて、先生が教室に来る前に私の方が先に行って待っているくらいでした。
キッズ@佳弘
私どもの教室の近くにも同様なお絵かき教室があります。
キッズ@香織
子どもの作品が外に飾ってあって、すごく目を惹きますし前を通りますといいなぁと感じますね。
長谷川先生
本校にもそこに掲示板がありますので、子どもの作品でも飾りましょうかね。
キッズ@香織
外に飾れる場があるのなら、いいと思いますね。
長谷川先生
外ですと、直射日光が問題になりそうですが、マメに作品を交換すれば可能かもしれませんね。よく幼稚園などでは外の掲示板に作品を飾ってらっしゃる所がありますしね。
キッズ@佳弘
先生から見ましてこちらの小学校をどう思うかお聞かせ願えますか。
長谷川先生
最初は礼法をやっているという事で、相当堅苦しい学校なのかなというイメージがありました。箸の上げ下ろしからして、「君、違うよ」と注意されるのではないかと心配していました。しかし、その辺に関しましては思っていたほど厳しくなく、内心ほっとしました。
キッズ@香織
礼法に関しては教員の方々も一通り習っているわけですか。
長谷川先生
小学校ですので、学級担任は一緒に礼法の授業を受けるという形をとっています。ですから、自然と礼法の基本的なことがらは身に付くというわけです。ですが、私たち専科の教員はまず礼法の授業には行きません。同じ時間に自分の授業があるからです。私は礼法に関心があるので、礼法に関する本を読んだり直接礼法の先生にお話を伺ったりと自分なりに学んでいるつもりです。
キッズ@佳弘
そうしますと、そこの所は自主的にということなのですね。
長谷川先生
そういう決まった仕組みはないですね。隣の中学高校ですとまとまった集団での研修などやっているようです。そうでもしませんと、中学高校はほとんどの教員が専科ですからね。
キッズ@佳弘
先生が考えます学校の魅力というのはどういった点にあると思われますか。
長谷川先生
この学校の魅力は、やはりすごく基本的なのですが、挨拶を大事にしているところかなと思います。それで本当に挨拶が大事だなと実感したのが、挨拶がきっかけになって、千葉県の私立小学校造形展が誕生したことです。
キッズ@佳弘
それはどういうことですか?
長谷川先生
今から10年以上前から神奈川県の私立小学校児童造形展に千葉から聖徳だけが特別参加していました。なぜ千葉県から、神奈川県の造形展に参加する事になったというと、夏に全国の私立学校の教員が集まる研修会があるのですが、そこで積極的に挨拶をしていましたら「千葉県には私立小学校の造形展はないんだって?だったら一緒にやらない?」と声をかけて下さった方がいまして、それがきっかけで参加するようになりました。10年以上やっていますと今度は「千葉県でもやらなきゃ」という気持ちになってきまして、造形展開催の方法なども分かってきましたし、ちょうど千葉県でも研修会が始まりまして、それならやろうという事になりました。千葉県のほかの私立小学校の図工の先生方のご協力により開催にこぎつけ、今年で3回目の開催に至りました。
挨拶一つとっても周りの方からの支援して頂ける事につながるということを実感しました。
キッズ@香織
本当に子どもが挨拶を気持ちよくしてくれるだけで受け取る印象が全然違いますし、もちろん子どもですから色々な見方が出来るのですが「元気でいい子だね」という印象と「あら元気がないのね」という印象の差がありますので、もちろん私どもの教室でも挨拶は大事に考えしっかりやると指導しています。
長谷川先生
よく学校に見学に来る方がいらっしゃるのですが、その際のアンケートを見ますと「すれ違う際に子どもたちから挨拶を受けて非常に気持ちがよかった」と書かれている方がいらっしゃいますので、本当に挨拶というのは大事だなと実感します。
ただ、挨拶でも気をつけなければならないのは、やはり相手を意識した上での挨拶でないと駄目なのですね。ですから、小学校では元気よく挨拶すればいいという指導の仕方をしていますが、そのレベルがクリアできたら段々と次のレベルへ、相手が求めている挨拶が出来るようにならなければいけないと思います。
キッズ@佳弘
そうですね。学年相応であったり、その場その場での挨拶というものもありますからね。
長谷川先生
「相手の存在を認める」ということが挨拶の裏に隠された本当に大事なことだと思います。
キッズ@佳弘
先ほど造形展のお話が出ましたが、こちらのお話を何点かお聞きしたいと思います。
まず、今回の造形展で図工ノートというものがありましたが、この内容やそれに伴う狙いをお聞きしてもよろしいでしょうか。
長谷川先生
もともと図工ノートをやろうと思ったのは、一つは今年度から授業時間が一単位40分だったのが45分に増えまして、図工の場合、授業が2コマ続きですから今まで80分だったのが90分になったのですね。ですので、その増えた時間をただ増えたというだけで使うのではもったいないなと思ったのです。そこで授業の最後に子どもが授業の感想を書いたりまとめたりするという活動を入れたいなと考えたのが理由の一つです。学校の方針、重点的に取り組む事として、どの教科でも国語の力を高めようという事をいっていまして、図工でもただ体験しておしまいではなくて、体験を言葉にまとめる事を通して、図工でも国語の力を高められればと、考えております。
キッズ@佳弘
ノートの中の書式などは、子どもたちが自分たちで考えて自由に書けるような形をとっているのでしょうか。
長谷川先生
こちらとしても特に決まった形のイメージがなかったものですから、とにかくまずは書かせてみてそこから徐々に手を入れてみました。
作品以外のアイデアスケッチですとか何か授業で使ったプリントなどは、大体なくなってしまったりします。ですから、そのノートに折りたたんで貼らせたりもしています。
キッズ@香織
ノート活用の、具体例を教えて頂けますか?
長谷川先生
絵本づくりの際に、一人一人が自分の思いついた「だれが」「なにを」「どこで」という3つの言葉を書きまして、それをクラス全員分混ぜ、くじ引きさせました。そうすると、例えば「おばけが」「本を」「渋谷で」といった変な組み合わせが出来るのです。それを基にアイデアを広げてお話にまとめていくという手段をとったことがあります。
キッズ@香織
そうしますと、話のベースとなる3つのキーワードをくじで引いた後、お話を考えたり、各個人が表紙を作ったり題名を考えたりという作業の仕方をとったのですね。ノートはどんなことに使用されましたか?
長谷川先生
授業で配った絵本づくりに関するプリントや、3つの言葉のくじは、本当は無くなっちゃうはずだったのですが、ノートに全部証拠として貼らせました。今、社会人の間でも情報をまとめるためにノートにまとめる事が流行ってますよね。そういう世の中で流行っている手法も取り入れてみたつもりです。
キッズ@佳弘
整理するという能力も身につくでしょうから非常にいい試みですね。
長谷川先生
そうですね。ファイルですと何かちょっと違う気がするのですね。例えばプリントをノートに畳んで貼っていったりと、そうすると本当に自分だけのノートが出来てきて愛着が出てくるのです。ファイルですと、ただ綴じているだけで余り愛着がわきせん。穴をあけて綴じるというのは、なんだか味気ないですよね。
キッズ@佳弘
確かにそのようにノートにまとめていくと、これだけやったんだという気持ちも出てくるでしょうね。
長谷川先生
そうですね。それがまた面白かったりするのです。活動はいつか忘れてしまうけれども、活動を形にして残すものとしてノートはいいと考えています。あと、誰かにこの活動の意義を伝えるときに、こういうノートがありますと、ただ作品だけ見せるよりもかなり説得力が出ます。先生の指導の証拠にもなりますしね。
感想を見ていますと、99%は楽しかったですと書いてくれるのですが、たまに「つまらなかった」と書いてくる子がいるのです。それは逆に私にとって刺激になって、子どもから評価されている感じがしてすごく面白いです。ですから、子どもとのコミュニケーションにもなりますし、授業の改善にもなります。ノートは是非どこでもやられるべきだと思います。

また、小学校には委員会活動というのもありまして4・5・6年生が混ざって活動します。私は広報委員会の担当になっており、集まってきた子たちに図工ノートに倣って広報委員会ノートをつくらせようと考え、ノートを配りました。今もっぱらやっていますのは、パソコンを使った表紙づくりです。将来行う、パソコンを使ったスライドづくりの練習を兼ねていますが、自分のノートに自分がつくった表紙を貼らせることで、ますますノートに対する愛着がわいているようです。

それから、ノートに○を付けてあげたり、シールを貼ってあげたりしています。特に子どもが喜ぶのはシールですね。妖怪ですとかファンタジーのシールを貼ってあげるとまたやる気が出てくるようです。
ノート指導に関する研究というのは、教育の質を高めていく可能性があると思います。
キッズ@佳弘
そうですね。図工でノートをどう活用するのか気になったのですが、とてもよくわかりました。
造形展では焼き物も随分と目を惹きましたが、焼成に際し窯が必要だと思うのですがこちらにあるのでしょうか。
長谷川先生
窯はここにはありませんので、取手に附属の女子中学・高校があり、そこまで片道一時間以上かけて持って行きまして焼いてきました。その日は詰めて焼いて帰ってきまして、冷めたころまた行きまして窯出しして次を詰めてと。
キッズ@佳弘
それは先生がおやりになるのですか。
長谷川先生
はい。もう本当に大変です。
一回の窯詰めで片道一時間ですから往復二時間ですよね。それで窯詰めはどんなに手早くやっても三時間くらいかかるので一回に五時間くらいかかりますね。
キッズ@佳弘
一日の作業でそれだけかかるとものすごい労力ですね。それは一回では終わらないのですよね。
長谷川先生
そうですね。一学級分くらいずつしか入りませんので、5年生限定でやっているのですが、それだけでも3学級ありますから、3回 + 最後の窯出しがあって計4回。一応事前にこちらで準備して釉薬はかけていきます。それでもかなりの時間はかかりますね。
キッズ@佳弘
そうしますと、この時期は本当にこの作業に時間をとられてしまうわけですね。
長谷川先生
そうですね。9月入って毎週取手に行っているといった感じになります。
キッズ@佳弘
授業の方もおありでしょうからスケジューリングが大変ですね。
長谷川先生
はい。授業が終わってから行くということもあります。
キッズ@佳弘
同じ専科の先生というのは他にもいらっしゃるのでしょうか。
長谷川先生
図工の専科になりますと、3年生付きの専科の先生がいます。この先生は3年生の図工だけを教えています。それから1,2年生は学級担任の先生ですね。来年度以降はどうなるか分かりませんが、増えると言う話は聞いていません。
キッズ@佳弘
そうしますと、先生の方では4,5,6年生を担当されているというわけですね。
長谷川先生
そうですね。他にも校務をかかえているので、これ以上はちょっと増やせないなといった感じです。
この焼き物は普通手作りで作らせてしまいますとすごく重たいペーパーウェートみたいなズシっとした食器しか子どもは出来ないのですね。なので、石膏で型を作らせてその型にかぶせて作っているので比較的軽く出来ています。そしてその石膏の型をどう作るかと言いますと、身近にあります豆腐のパックですとか納豆のパックですとかイチゴのパックですとか、ああいうものに石膏を流し込むだけで作れます。
キッズ@香織
確かに何かのパックっぽいなと思っていました。でも、それ以上に皆さんとても上手だなという印象を受けました。
長谷川先生
これは手づくりではちょっと無理ですね。
キッズ@香織
そうですよね。子どもたちが手づくりでどうつくったんだろうかと思ってました。
長谷川先生
この型を使うというのは図工の一つの可能性だと思います。既にある物を使って作る、あるいは描く、版画みたいな感じもします。型を使うという事は小学校では非常に有効かなと思いますね。自分のかけた労力以上の出来栄えがあると子どもはうれしいのです。かけた労力以下だと悲しいのです。ですから、この型を使いますと、かけた労力以上の物が得られますので自然と子どもたちは喜びます。
キッズ@佳弘
この労力と喜びという事は図工に限らずあらゆる面でも言えそうですね。
子どもたちはこの作った食器を家に持ち帰り、それぞれの食事を持って写真をとってきたわけですね。
長谷川先生
そうですね。家庭での親子の会話まで聞こえてきそうなものになったかと思います。
キッズ@香織
本当にそうですね。とても素敵です。
長谷川先生
お家の人のコメントなんかもあったりすると更によかったかも知れませんね。
これも今4年目くらいになるのかな。最初の頃は本当にご家庭のご協力を得るのが難しくて、写真が集まらず大変でした。今は皆さんやるものだと思っているらしくてそういう事はないですね。ただ、中には変な写真もあります。リンゴがただ置いてあるだけだとか・・・
キッズ@佳弘
造形展での展示物は、各学年から選んだ物だけを展示しているわけですか。
長谷川先生
はい。ぜひ見てもらいたい作品を選び展示してます。
キッズ@佳弘
スペース的な問題もありますしね。他の学校も同様な感じなのでしょうね。
長谷川先生
造形展のねらいの一つは図工の研究成果の発表ですから、研究成果として発表するのに値する作品を出したいなという考えはあります。他の学校ですと保護者の満足を高めようという考え方から全員分出したり、ほかの展覧会で賞を取った物を出したりしている学校もあります。
キッズ@佳弘
そこは学校ごとに若干違いが出てくる所なのですね。
長谷川先生
その辺はもう少しまとめていかなければ展覧会自体の質にあやふやな所が出てきてしまうかもしれないですね。
キッズ@佳弘
しかし、このような場があるという事は子どもたちにとっても非常に励みになるかと思います。
こちらのお面なんかも個性豊かな作品になっていて非常にいいものですね。
長谷川先生
このお面は3年生の図工の教員が指導しました。
キッズ@佳弘
これも何か型があった上での制作だったのですか。
長谷川先生
これはもともとは私の方でやった授業をそのままやられているのですが、「段ボールでつくるお面」という本があるのですね。その本に型紙が入っていまして、その型紙を段ボール紙に写しましてそれを切って折り曲げたりしていくと立体状になりますので、それに軽量の紙粘土を付けて作成しています。ですから、その中には板段ボールの芯が入っています。
キッズ@香織
本当に迫力のあるものから可愛らしい物まで様々な物がありますね。
長谷川先生
作品だけでは伝えきれないことがある、ということが造形展の反省会で話題に出まして、来年度実現するかどうかまだわかりませんが、ビデオ放映コーナーを作りまして授業の様子ですとか、指導者の思いですとか、そういうものをインタビューなどを交えて放映したいなと思っています。
キッズ@香織
既に来年に向けて動いているのですね。
長谷川先生
ええ、構想は既に動いています。東京や神奈川ではそういった試みはされていませんので、是非やって差を付けたいなと思っています。
キッズ@佳弘
千葉の特色になりますね。
キッズ@香織
先生は受験問題の絵の担当もされていらっしゃると伺ったのですが。
長谷川先生
今年度はやってないのですよ。今年は3年生の図工の先生が担当しました。表紙だけは私なのですが、昔描いた物を再利用しております。
キッズ@香織
例年問題を見ていますと入試問題にはいつも表紙が付けてあり何かしらのお話を題材にされて描かれてているようなのですが、この内容については先生の方で全部決められて作られているのでしょうか。
長谷川先生
例えばジャックと豆の木ですとか明らかにお話的な物は、附属の幼稚園の学芸会で年長さんが発表するものから決めていたこともありました。最近では思いつきで決めていることが多いような気がします。
キッズ@香織
先生の方で絵を担当されていた際、気をつけていた点がありましたら教えてください。
長谷川先生
幼稚園の先生や大学の心理学の先生を交えた検討会がありますので、その際に、これではよくわからないという指摘を受けまして、それを何度もやっていきますと段々描いている時からこういう事を言われるかな、と想定がつきまして。例えば奥行きを出すためについつい絵を重ねてしまったのですが、そうするともう駄目ですね。子どもには分かりにくいと指摘されました。
キッズ@香織
そうですよね。子どもに分かりやすい絵というのは難しいです。
長谷川先生
陰影なんかを付けても子どもにはかえって分かりにくい事もありますしね。
キッズ@香織
これはカラーで描いた絵を白黒で印刷されているのですか。
長谷川先生
いえ、初めから白黒で作成しております。来年からカラーの方がいいでしょうか?カラーの方が絵の幅は広がりますよね。イチゴなんかも明らかに赤く描けますし。
キッズ@香織
カラーにした場合、子どもたちはより分かり易くはなりますね。
長谷川先生
はい。Gテスト(私立小学受験Gテスト)はカラーでおやりになってますね。
キッズ@佳弘
はい、模試で使用している問題はカラーで行っています。
長谷川先生
印刷機があれば確かにカラーにする案も実現出来るかもしれないです。他校ではポスターくらいなら自分たちで作れるような機械もあるようです。

造形展をやっていますと、いろんな先生方とコミュニケーションをとれますので世界が広がります。
キッズ@香織
基本的には学校でのお仕事になるでしょうから、そこから同じ専科の先生同士のつながりが持てるのはいいですね。
長谷川先生
私学ですと基本的には移動がありませんので、どうしても世界が狭くなってしまう恐れあります。
キッズ@香織
今年度以外の問題は長谷川先生がずっと担当されてきたのでしょうか。
長谷川先生
もっと昔は附属幼稚園の先生で絵の達者な先生がいまして描いてもらっていたのですが、その先生がお辞めになって私が描くようになりました。
キッズ@佳弘
先生の方では保護者の方々との接点はどういった所であるのでしょうか。また、保護者の方々に期待したいことがありましたらお聞かせ下さい。
長谷川先生
図工の教師としてですよね。
キッズ@佳弘
はい。
長谷川先生
すごく熱心な方がいまして造形展などを行いますと必ず感想などまとめて出して下さる方がいますね。しかし、それに対してお返事をきちっと書けずにいる状況なのですが、お会いした時にお礼を述べたりしています。図工の教師として余り保護者の方々との接点というのは無いですね。造形展でアンケートを書いて下さったりですとか、そういう事はありますが。
キッズ@佳弘
そうしますと、後はそれこそ造形展などに来られた方とお話をするといったくらいになるのでしょうか。
長谷川先生
それは大いにあります。ただ、それはたまたま私がそこにいて、たまたまその方が来られたといったケースになります。
キッズ@佳弘
担任の先生のように保護者面談があったりという事はないのですね。
長谷川先生
ないですね。一応専科の授業参観というのが年に一回あるのですが、そういう時は授業を見ていただいています。ただ、図工に関しては、大勢の方は観にいらっしゃいませんし、作品の展示でもって見て頂いてる面もありますので、今後見直していく必要はあるかなと、思っています。

接点といいますと、本当は図工便りのような物を作って配りまして、こちらの考えですとか狙いですとか子どもたちの様子ですとか、そういったことが伝えられればいいのでしょうね。
キッズ@佳弘
そうしますと、希望としてはどこかでやっていきたいというお考えなのですね。
長谷川先生
やる必要性が差し迫ればやろうと思います。
キッズ@佳弘
先ほどの話に戻ってしまいますが、ある意味図工ノートがその役目を担うかもしれないですね。
長谷川先生
そうですね。ですが、図工ノートが保護者の目に届くわけではないので、本当はそれを保護者の方々の目に入ればいいのでしょうが。
キッズ@佳弘
先生が児童を指導していまして、どのような方向に伸ばしていってあげたいとお考えでしょうか。
長谷川先生
これも図工に関してですよね。
キッズ@佳弘
そうですね。授業を通して子どもたちのどういった点を伸ばしていってあげたいと考えていらっしゃいますか。
長谷川先生
作品を前にして私がうれしい時というのは、その子の持っている感性というと多少曖昧な言葉なのですが、思いですとか主張が作品からストレートに出てきてそれが見た人に伝わるのがすごくうれしいのです。美術を専門に学んでこなかった学級担任は、結構見栄えを意識してしまうのですね。その作品を保護者が見たらどういうかしらと。人の目を意識した作品作りに走ってしまう場合があるのですね。私のねらいは、その子どもが持っている個性を、作品が「この子はこんないいところがあるんだよ」と伝えてくれるような、そういう広報的な役割といいますか、作品がその子の良さをアピールしてくれる、そういう作品を作らせたいなと思っています。ですから子どもが本当に自分に正直に作品作りが出来るような子になってほしいという思いがあります。大人に作らされているのでは意味がないですし、大人が作らせたい作品を子どもの手で作らせているだけになってしまうので、やはりそうではなくて私の考えの中には子どもの中に宝があるんだよと。その宝の箱をパカッと開けるような授業にしたいと思っています。自分が持っている宝物というのは、自分でも余り気付かないですよね。自分の事っていうのは分かっているようで分からないですから。それを図工という鍵でもって開けてあげたいという思いがあります。箱が開いてその子の持っている良さが出てくる。ですから子どもに対して求めているのは、そんなに人の目を気にしないで自分のいいと思う作品をつくってほしいということです。でも、それが難しいのですね。芸術は、自分との闘いです。

造形展では見せられないのですが、すごいおどろおどろしい作品を作る子もいるのです。だけど、それはその子の本当に持っている個性を出しているわけですからすごくいいなと思います。こういうオフィシャルな造形展ではなく、ちょっとこうサブカルチャー的な造形展もやってみたいですね。あったら面白いかなと思います。ちょっと人には見せられないけどこれはいいぞ、と。
キッズ@香織
それはそれでその子の自信につながるでしょうね。
長谷川先生
それに選ばれちゃったと複雑な心境になるかもしれませんがね。
キッズ@香織
そこはやり方次第になってくるんでしょうね。
キッズ@佳弘
子どもたちにとっても、他から認めてもらえる場が出来るという事は非常にいいことだと思います。
キッズ@香織
一般的にも例えば絵にしても黒でぐちゃぐちゃと描かれていたら「この子どうしたのかしら」と思いますし、なかなかそれを認めてくれる環境といったものがありませんからね。
長谷川先生
話が若干それてしまいましたが、子どもたちのどこを伸ばしていきたいかという事でしたね。
キッズ@佳弘
はい。
長谷川先生
自分に正直と言いますか、子どもたちの内面を正直に出させていきたいということですね。そうでなければ、図工の教師としてはやっていけません。子どもから教わる面がないと続きません。こっちがこうだと教えていくインストラクター的なやり方には、全く魅力が感じられません。
たとえば授業中「先生、出来ました」といって持ってくる子が多いのですが、私が見ますと「出来てない」のです。アドバイスをして付け足しをさせますが、またすぐに持ってきます。その辺を何度か繰り返すのですが、絵の場合ですと黒板に貼りつけて遠くから眺めさせたりするのです。そうすると子どもたちなりに気付く所があります。30,40センチの距離で見ていますと見えていた物が何メートルか離れると全然見えないなとか、もうちょっとこうしてみようといった点が出てきたりします。子どもたちなりに気付くところがあるのです。自分たちで気づいてほしいという思いがあるからです。先生が「いい」といわれたらいいのではなくて、自分の中にもう一人の自分を作って、そのもう一人の自分との対話の中で「よし、出来た!」と決められる子になってほしいなと思っています。

ただこれはまだ中学、高校レベルの話だと思いますね。高校生でも難しいかもしれません。ですから、図工を通して自分自身の中で対話が出来るような、自分は出来たと思ったけれども、もう一人の自分はまたちょっと違う見方をしているという。それが「自律」につながっていき、やがて本当の「自立」につながるのではないかと考えています。教育の最終的なゴールは先生がいらない状態になる事かなとも思っています。ですから、もう一人の先生を自分の中に育てられればいいなと。先生が見ている所でしか出来ない子には絶対にしたくないなとも思いますからね。先生が見ていない所で自分なりに取り組める子になってほしいと思います。

繰り返しになりますが「出来ました」と持ってきた子どもに対して如何に「まだ出来ていない」という事を分からせるかという、見方によっては子どもと格闘しているようでもありますね。子どもが出来ましたと言ってからが本当の図工の授業ということです。
キッズ@佳弘
分かりました。これも図工に限らずな事ですね。考えさせられます。
長谷川先生
「出来あがった」というのと「仕上がった」というのはやはり違う事だと思うのですね。よくオリンピック選手で十分な仕上がりが、と言ってる事がありますが、出来あがったというとなんか安っぽい感じがしますよね。仕上がったという感じにしていきたいと思っています。
キッズ@佳弘
自分の中にもう一人持つということですが、客観的に物事を見れるようにするということなのですね。
長谷川先生
そうです。
キッズ@佳弘
確かに難しいことなのでしょうけど、必要なことだと思います。
長谷川先生
図工とか美術とは、何か主観的で直観的な印象が強いのですが、現代アートに関してはそれを裏付ける情報を発信した上で作品があるという事が一般的ですので、作品の中に「対話」を感じやすい気がします。図工・美術が世の中からもっと理解を得るためには、主張(=作品)だけでなく、その根拠(=情報)が合わせて必要だと感じます。その根拠に繋がるのが、自分や他者との「対話」だったり、客観性だったりするのではないかと思います。
ですから、先ほどの話であった図工ノートを始めたばかりなのですが、自分の活動を客観的に振り返り自分の言葉として表わす事で、より多角的に考えられる子に育てていかれたらと考えているのです。
キッズ@佳弘
わかりました。
長時間にわたりお話頂きありがとうございました。
長谷川先生
いえ、少ししゃべりすぎました。
キッズ@佳弘
そうですか? 児童とも良く話をされそうな印象を受けますが。
長谷川先生
いえ、あまりしゃべらないですね。子どもにはこういったことを語る場がないものですから。授業の時はほとんど作業させていますしね。図工の授業では、話を聞くのはあまり好きではないようです。
キッズ@香織
確かに手を動かしていた方が子どもたちはいいですしね。それに図工はわくわくする時間ですからね。
キッズ@佳弘
今日は本当にありがとうございました。先生の児童に対する思いや学校への話、貴重なお話を頂けました。
長時間お時間頂き、ありがとうございました。
キッズさくらカレッジ幼児教室 上田豊治
キッズカレッジ幼児教室 やちよ中央教室